MIDIの決まり

MIDIを使いこなすためには、3つの決まりを知っておく必要があります。
ここでは、MIDIを使いこなすために必要な3つの約束事について解説します。

(1) MIDI端子


MIDI情報のやり取りには、専用のMIDIケーブルを使います。MIDI楽器には、このMIDIケーブルをつなぐために、専用のMIDI端子が付いています。
MIDI端子には、以下の3つの種類があります。


IN端子(イン)
MIDI情報を受け取るための端子です。ここからMIDI情報が入ってきます。

OUT端子(アウト)
MIDI情報を出すための端子です。本体から出力するMIDI情報は、ここから出ていきます。

THRU端子(スルー)
INから入ってきたMIDI情報を、そのまま出すことのできる端子です。
この端子を利用すれば、MIDI情報 を 次の楽器に伝達することができます。


THRU端子を使うと、次図のように同時に複数台のキーボードや音源モジュールを接続することができます。
ただし、THRU端子を使って接続できるのは3台以内と限られています。というのは、MIDI情報の伝達の仕組み上、THRU端子を使って情報を伝達していくとMIDI情報が変化してMIDI情報のエラーを起こしてしまうからなのです。同じような理由で、MIDIケーブルの長さも15メートル以内にすることがMIDI規格で定められています。
それでは、たくさんのMIDI機器を同時に使えないじゃないか、と思われるかもしれませんが、そのような場合には、MIDIパッチベイと呼ばれる分岐ボックスが発売されていますので心配ありません。これを使えば、MIDI情報を劣化させずに、多くのMIDI機器に情報を送ることが可能です。


(2) マスターとスレーブ


MIDI情報を出力して指令を出す機器を「マスター(主人)」と呼び、そのMIDI信号にしたがって仕事をこなす機器を「スレーブ(奴隷)」と呼んでいます。この、マスターとスレーブの関係は、同期演奏を目的としたMIDIシステムを組むときにはしっかりと把握しておく必要があります。


クロックについて

シーケンサーやコンピューターは、プログラムしたデータで自動演奏をする能力がありますが、このような機器を使ったMIDIシステムを組むときには、クロックという概念を理解しておく必要があります。

このクロックという概念は、同期のためのものですから、リモートコントールを目的としたシステムには関係ありません。したがって、シンセサイザーや音源モジュールにはクロックの設定ははじめから用意されていません。クロックの設定は、同期システムを組むときにだけ必要になります。自動演奏能力のあるシーケンサーやコンピューターのシーケンスソフト、ドラムマシーンだけがクロックの設定を持っているのです。

さて、クロックには基本的に二つの設定状態があります。
一つは「インターナルクロック」と呼ばれる状態です。この設定状態では、
シーケンサーやドラムマシーンは設定された独自のテンポで動くことができます。

そしてもう一つは、「エクスターナルクロック」と呼ばれる状態です。
エクスターナルクロックの場合は、自分勝手には動くことはできません。外からの同期信号(シンク信号)によって指定されたテンポでしか動けないのです。この設定になっていると、同期信号が送られて来なければまったく動きません。ここでいう「エクスターナルクロック」とは、外部からの同期クロックという意味で、MIDIシステムの場合は「MIDIクロック」のことを指しています。

人間がバンドアンサンブルをするときには、ドラムやベースに合わせてメンバー全員が同期演奏をしています。人間の世界では当たり前のこととして余り意識しませんが、機械に同期演奏をさせるにはそれなりの設定をしてやる必要があるのです。

たとえば、上図のようなMIDシステムで同期演奏をさせたいときには、コンピューターのテンポ指示に従ってシーケンサーが動かなければいけません。もし、コンピューターとシーケンサーがそれぞれ勝手なテンポで自動演奏をはじめると、それぞれの担当するパートがどんどんずれてしまうのはお分かり頂けると思います。このようなことにならないように、ちゃんとテンポを合わせて演奏させたければ、コンピューターにはインターナルクロック、シーケンサーにはエクスターナルクロック(MIDIクロック)を設定しておく必要があるのです。この設定が正しくなされていれば、シーケンサーはコンピューターの指示したテンポにしたがって同期演奏をはじめます。



クロックとは

クロックというのは、テンポを相手に伝えるための信号のことです。たとえば、オーケストラの指揮者は拍に合わせて指揮棒を振ることで、テンポを伝えています。これも立派なクロックです。MIDIの場合は、クロック信号(同期信号)という信号でテンポを伝えています。
さて、オーケストラの場合は、指揮者は自分自身でテンポを決めて指揮棒を振ります。演奏者は指揮者の振る指揮棒に合わせて演奏します。これも一種の1同期演奏なのですが、この場合だと指揮者はインターナルクロックで、演奏者はエクスターナルクロックで動いているということになります。
MIDIも同じです。2台のシーケンサーがMIDI接続されていて同時に演奏する場合、どちらもインターナルクロックで動いてしまうとバラバラの演奏になってしまいます。そこで、1台をインターナルクロックに、もう1台をエクスターナルクロックに設定してやります。すると、エクスターナルクロックに設定した方の機器はもう1方の機器が出すテンポに合わせて演奏するようになります。これが同期演奏です。
ここまで、クロックについて、理解して頂けたでしょうか。

同期演奏とは

DTMでは、同期演奏を使うことはほとんどありませんが、MIDIシステムを組んで音楽制作を行うような場合はテンポを持った2つの楽器を同時に鳴らすということは結構よくあることなのです。
たとえば、ドラムやパーカッションのパートをシーケンサー付きのサンプラーで作成してメインのシーケンサーと合わせたり、生ギターのカッティングをハードディスクに録音しておいてそれとメインのシーケンサーを合わせたりなど。また、レコーディングやビデオ編集などの際には、シーケンサーとMTR(マルチ・トラック・レコーダー)やビデオデッキを同期させて作業を行います。もちろん、最終的にはすべての音をステレオにミックスしてCDやビデオに入れるのですが、同期システムを組むことで、最後の最後までシーケンサーやサンプラー上でエディットすることができます。
こういった同期システムも原理は同じで、1つの機器をインターナルクロックに、他の機器をすべてエクスターナルクロックにして、1つのテンポですべての機器が演奏するように設定しています。
マスターとスレーブが分からないというご質問もありましたが、この同期システムの中で、テンポを出している機器がマスター、そのテンポに合わせて動いている他のすべての機器がスレーブです。マスターとはご主人様、スレーブとは奴隷という意味がありますが、まさにマスターが命令を出し、スレーブがその命令通りに動くという図式になるわけです。


(3)MIDIチャンネル


MIDIで情報のやり取りをするには、MIDIチャンネルを合わせる必要があります。というのは、MIDI情報のほとんどが、それぞれの情報にチャンネルが指定されて出力されているからです。

MIDIのチャンネルには、1から16までの16種類があり、マスター側でどのチャンネルで情報を送るかを設定できるようになっています。この送る側のチャンネルを「トランスミットチャンネル」と呼んでいます。そして受け手側も何チャンネルの情報を受けるかを設定できるようになっているのです。この受ける側のチャンネルを「レシーブチャンネル」と呼んでいます。

たとえば、シンセサイザーから音源モジュールにMIDIで情報を送って鳴らそうと思ったら、シンセサイザーのトランスミットチャンネルに音源モジュールのレシーブチャンネルを合わせる必要があります。MIDIケーブルが正しく接続されていても、このチャンネルが合っていないと、マスターからのMIDI情報にスレーブ側は反応しない仕組みになっているのです。


MIDIチャンネルとは、いったい何のためにあるのでしょうか?

MIDIチャンネルは、テレビのチャンネルと同じようなものと考えてください。皆さんが家庭でテレビを見るとき、見たい番組のチャンネルを選択すると思います。MIDIもいろいろなチャンネルの情報の中から任意のチャンネルを指定してやると、そのチャンネルの情報だけを使うことができるのです。テレビには、NHK、TBS、フジテレビ、テレビ朝日、日本放送など、幾つものテレビ局から電波が出てきています。私たちは、その中から見たい番組のテレビ局のチャンネルを選択していきます。同じように、MIDIの情報もいろいろなチャンネルの情報を混ぜて送ることができます。その中で、レシーブ側に反応させたい情報のチャンネルを指定してやることによっていらない情報とほしい情報を区分けすることができるのです。
もう少し具体的に説明しましょう。下記のようなMIDIシステムを組んだ場合を考えてみてください。


コンピューターには、メロディパート(トランスミットch1)、ベースパート(トランスミットch2)、ドラムパート(トランスミットch10)の3つのパートが、別々のトランスミットチャンネルで入れてあるとします。

このようなMIDIシステムを組んで、シンセサイザーではメロディ、音源モジュール1ではベース、音源モジュール2ではドラムパートを演奏させたかったとします。

マスターであるコンピューターからは3つのパートのMIDI情報が一緒になって出ていき、それぞれの音源に伝えられます。このとき、シンセサイザーのレシーブチャンネルを1に、音源モジュール1は2に、音源モジュール2は10に設定しておけば、それぞれが指定されたパートだけを演奏してくれるのです。

このように、1本のMIDIケーブルでいろいろなデータを混ぜて送ってやっても、それぞれにやらせたい内容を指定できるようにMIDIにはチャンネルがあるのです。


以上の説明で、MIDIチャンネルにはトランスミットチャンネルとレシーブチャンネルがあることと、なぜチャンネルが必要なのかは理解して頂けたと思います。さて最後に、チャンネルについてもう一つだけ憶えておかなければならないことが残っています。それは、レシーブチャンネルには1〜16以外にもう一つの状態があるということです。

その状態とは「OMNI(オムニ)モード」と呼ばれるものです。このOMNIモードがONの設定になっていると、すべてのチャンネルの情報を受け取ってしまいます。したがって、OMNIモードはOFFにしておかないと、レシーブチャンネルを設定しても意味がありません。OMNIモードの考え方は、レシーブ側だけのものです。トランスミット側にはOMNIモードはありません。
MIDIを使うために必要な基礎知識として、


1. MIDI端子の種類と結線の基本
2. マスターとスレーブの関係とクロックの概念
3. MIDIチャンネルの意味


という3つのポイントについて解説しました。
この3つのポイントが、MIDIを使うための基本的な約束事です。MIDIの神髄に迫るには、まだまだいろいろなことを勉強していただかなくてはいけませんが、とりあえず簡単なMIDIシステムを組んでやってみようという方には、上記の3つのポイントさえしっかり把握しておけば十分なのです。ここまでのことが一応ご理解頂けた方は、さっそくMIDIシステムに挑戦してみてください。そして、使いこなすために必要でと思われたところから、徐々に知識を積み重ねていってください。